前回のサマソニ出演(2023年)以来の来日公演。今回のツアーはファースト・アルバム「In Your Face」を全曲演奏する企画ツアーの一環となっている。
前回の来日以来、バンドには激変といっていい出来事が続いた。2024年4月にはバンド内でアンジェロ・クリス陣営とノーウッド・ウォルト陣営に分かれて対立が表面化、結果的にノーウッドとウォルトがバンドを脱退し、Fishboneという名義の差し止め請求を行ったというニュースが流れた。
本当に一時はバンドの行く末を真剣に案じていたのだが、結果的にバンド名はそのまま使用され、アンジェロとクリスが中心になって新メンバーを集め、旧メンバーであるスペイシーTの復帰などもあり、またクォリティの高い新アルバム「Stockholm Syndrome」も完成させ、ついには来日公演も行うこととなった。まずは無事バンドが存続し、素晴らしいライブを見せてくれたことに感謝したい。
今回のツアーでは動員面でスケールアップを図ろうとしていたようだ。EXシアター六本木のキャパは約1600人、GORILLA HALL OSAKAのキャパが約1300人、名古屋ダイアモンドホールは約1000人。東京公演ではクリマン会員に無料チケットを出すくらいだったのであまり埋まらなかったようだ。実際前方モッシュピットでもかなり隙間を感じられた。前回単独ツアー(2013年)の時は梅田Shangri-Laが約400人程度、下北沢GARDENのキャパは約600人。その前の2000年ツアーの心斎橋クラブクアトロで約650人…ということで個人的には中途半端に広い会場でやるのではなく、距離感の近いライブハウスで演奏した方がフィッシュボーンというバンドには合っているように感じるし、より一層 盛り上がりも期待できると思う。
脱退騒動以降に加入した新メンバーについて。トランペットのJS Williams
はソロの作品を出している他、George Clintonのパーラメント・ファンカデリックツアーにも帯同して2024年には来日もしている。
(P-Funkのライブでソロを吹くJS。フィッシュボーンTを着ている)
脱退したダーティ・ウォルトもいいプレイヤーだが、今回JSが吹いたことで、アンジェロのサックス、クリスのトロンボーンと合わさってFishboneホーン史上最強にうまいホーン演奏ができていたと感じた。煽り役としてもステージを走り回っていて、ムード作りにとても貢献していたと思う。
ドラムのHassan Hurd。一言で言うと手堅い、という印象。この人も色んなプロジェクトをやっていて引き出しがいっぱいあるんだと思うが、今回のツアーではあまり目立つようなことはなかった。オリジナル・メンバーのFishよりジョン・ステュワートのプレイに近い。ずーっと安心して聴いていられるという感じで、力強く、安定感がよかった。腕もゴツい。
ベースのJames Jones。JS Williamsと共に「Blu Eye Extinction」のメンバーとしても活躍していた。
この人も変に目立つようなことはなく、バッキングに努めていた印象だが、本気で前に出て目立ったらとんでもないプレイを見せてくれそうな気もする。意外なところではコーラスがとてもいいので、Fishboneの曲で多くを占める(実はとても重要な)コーラス・ハーモニーも綺麗に決まった場面が多かった(JSもうまい)。
リズム隊、特にベースはノーウッドと比べられてしまってプレッシャーに感じるかもしれないが、歴代とは違う傾向だけどこちらはこちらで悪くないグルーヴ。次は彼らリズム隊のファンキーさが思い切り前面に出たところも見てみたい。
返り咲きのSpacy T、相変わらず手堅くうまいので安心して見ていられる。アンジェロやクリスらのフロント組にどんどん絡んでいくのもよかった。ただ、異名通りのスペイシーでぶっ飛んだギターソロをあまり披露してくれなかったのが心残り。次回はたっぷりソロを聴かせてほしい。
今回、管理人のmoggeeさんとmine-Dの二人で大阪と東京の2箇所を行脚。名古屋はさすがに行けなかった。
9月14日大阪@Gorilla Hall
大阪はゴリラホールという比較的最近できたライブハウスで、中心部からのアクセスはあまりよくない。キャパがかなり大きいのでぎゅうぎゅうということはなく、客席は割と間隔が空いていた。
オープニング・アクトのMAYSON's PARTYの演奏が終わり、いよいよメンバー登場。アンジェロは黒のスーツに黒のハットとシックな出で立ち。「In Your Face」の曲から始まる。アルバムの最後に収録されている「Post Cold War Politics」に関して、セットリストでは1曲目に書かれているが、記憶では1曲目ではなく、中盤あたりに演奏されたように記憶している。なぜ1曲目に書かれていたのかは不明。「When Problems Arise 」からは曲順通りに演奏された。演奏は非常にうまく、手堅く、さすがという印象。ただ、このアルバム自体がフィッシュボーンのニューウェイブ期の名残が強い、後年から見ると比較的大人しい音作りということもあり、いきなりこのアルバムの曲で盛り上がるという感じでもなかった。客の反応もイマイチ。A Selectionではアンジェロの娘シャイアンも登場、盛り上げ役に徹していた。
Cholly、I Wish I Had a Dateとスカの曲が続いてフロアが少し熱くなった後はじっくりと聴かせるA Movement in the Light。この曲の出来が殊の外よかった。その後アップテンポのGive It Upでさらに客席が盛り上がる。All Together Free!の大合唱が起こる。次のIn The Airのファンキーなジャム、クリスのヒップホップ的な解釈も見られた。次のTurn the Other Wayはスローテンポで歌い上げる。Knock Itはこのアルバムではいちばん「ファンキーさ」を感じられる楽曲で、かなりダンサブルな仕上がりになっていた印象。この曲の途中でオハイオ・プレイヤーズのLove Rollercoasterを部分的に演奏した!知る限りフィッシュボーンがこの曲を演奏したのは初めてだと思ったが、2日後に東京でハッシーさんに聞いたところ、以前演奏したことがあったとのこと。この人の知識量は異常なほどすごいので、おそらく事実だと思う。最後は"Simon Says" The KingpinでIYFパートは終了。
ここからはヒット曲+最新作からの曲ゾーン。Swimのイントロが鳴らされたとたんに我慢できず一緒に見ていたmoggeeさんに断って最前のモッシュピットへ!かなりスカスカ(Fishboneだけに?)だったのでいちばん前くらいに行くことができました。最前ではけっこうモッシュが起こってましたが、客のダイブはなし。しかしアンジェロが客席へダイブしてくれた!客が少ないので落ちないかハラハラしたが、みんな必死で支えていた。ちょっと触ったがスーツは汗でびっしょりだった。Subliminal Fascism、Skankin' to the Beatと初期の盛り上がる曲が続く。客もそこそこ盛り上がってきてモッシュが捗る。
その後はRacist Piece of Shit、Last Call in America、Suckered by Sabotageと最新アルバムからの曲のパート。クリスのボーカルが冴える。昔と比べると丸々と太ったクリスは今のバンドの中でユーモラスな面を担当しているように感じられる。若い頃のようなキーボードをめちゃくちゃに倒すパフォーマンスを何度もやってくれていて大変よかった。トロンボーン投げも健在。
アンジェロはもう還暦だがまったく変わってなかった。時折、自身のインスタに上げるセルフィーの姿はさすがに年相応の顔という感じなのだが、ステージでのパフォーマンスはまったく違う!本当にいっさい歳を感じさせない。生き生きとして、激しく、クレイジーで、同時に気品がある。歌唱力もまったく衰えていないと感じた。本当に一級のエンターテナーだ。
ステージも終盤、Ma and PaからParty at Ground Zero、Everyday Sunshineとおなじみのナンバー連発で客も盛り上がり最高潮に!かなり高齢化が進む客(mine-D筆頭)は、このあたりでバテて肩で息をしている人が多かった印象w。最後はSunless Saturdayで〆て終了。燃え尽きた…。残念ながらアンコールはなし。
9月16日東京@EX THEATER ROPPONGI
この日は映像に撮ってYouTubeにアップしてくれた人がいたので、そちらを参照しながら。序盤のIn Your Faceパートは大阪と同じ。東京のセットリストも1曲目にPost Cold War Politicsが書かれているが、この日は演奏されなかった。
今日のアンジェロは真っ赤なスカートに、白地に派手な絵柄入りのジャケットという出で立ち! 途中で「オドレマスカ?」という煽りも。昔作った「日本語講座」というコーナーを思い出す。
http://fishbone.s27.xrea.com/japanese/misc/nihongo.html
前半のIn Your Faceパートは曲順も同じなので省略するが、後半の新作からのパートは曲をかなり変えてきた。Last Call in America、Suckered by Sabotageの代わりにSecret PoliceとGelato the Clownを。この日もクリスは絶好調という感じでステージを自由に動き回ってはキーボードを壊れるくらい傾けたり、トロンボーンを吹いたりしていた。Secret Policeではメッセージが伝わるように、ステージ縁まできて語りかけるように歌っていたのが印象的だった。
終盤、Party at Ground Zero、Sunless Saturday、Everyday Sunshineのヒット曲連打で一気に畳み掛けて本編終了!最初はそれほどでもないかと思っていたお客さんの暴れ具合もここらあたりでは完全に開放されており、果敢にモッシュを仕掛けていく客がまだまだいた。ESに本編は終了ー。
今日はアンコール成功。あえて毛色の変わったGelato the Clownをアンコール1曲目に持ってくるという構成がよかった。Gelato the Clownは、mine-D言うところに「ディキシーランド・ジャズ」風味の名曲で、いわゆるミクスチャーのバンドでこんなテイストを出せるようなのは他にいないだろうと思える。アンジェロの圧倒的な歌唱力に痺れまくるしかない。
そしてアンコール1曲目は、大阪では中盤にやったMa and Paを。やはり定番の盛り上がる曲。そしてなんとアンコール3曲目も答えてくれた!Fishbone屈指のハードコア楽曲Servitude。途中、クリスがスペイシーTからギターを受け取り、ソロを弾く場面もあったりして。
思えば昔、2000年代の狭いハコでやってた時とはずいぶん印象が違ったことは確かだ。シャイアンの存在も含めてショウアップされ、ノーウッドやウォルトが代表していたような「どす黒い」部分は削ぎ落とされていると感じる。しかし、「今のフィッシュボーン」を堂々と見せてくれた感じ。いっさい大人しく枠にハマるといったことがなく、昔と同じくハッチャケたライブを見せてくれたので大満足だった。FishboneはまだまだREDHOT!だ。
今回のアルバム再現ライブをぜひシリーズ化してもらって、Truth and Soul、The Reality…、Give a Monkey a Brain...などもやってほしい。それを期待して筆を置きたいと思う。

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